友人の愛犬がお亡くなりになりました。大変に厳しい病気を治療によって幾度も乗り越え、亡くなる前日もおもちゃで元気に遊び、当日も食事をし、突然逝ってしまいました。

　自分の愛犬、愛猫、患者様のワンちゃん、ネコちゃんがお亡くなりになったときと同じように、とても悲しくやりきれない気持ちです。

　自分がまだ駆け出しの獣医師だった頃、患者様をなでたり、言葉をかけてかわいがったりすると、そういうことは医療者として慎んでくださいとおっしゃる先生がおられました。理知的でプロフェッショナルな姿勢を強調して示すことは、治療の説得力を強めるという意味づけがあり、その逆はプロとして弱いというお考えだったのだと思います。

　私自身は、獣医師として、治療について感情に揺れることなく科学的な知見に基づいて自分の力の及ぶかぎりできるだけのことを冷静に進めていくことと、ひとつの生命が失われたことを心から悼むことは、決して両立しないことではないと考えています。このような姿勢はプロの獣医師としては客観性が不足しているとお叱りを受けるかもしれません。それでも、

　命あるものは必ず滅する。それはとても悲しい。

　ひとりの有限な人間として、そんな気持ちを忘れずに大切にしていきながら治療をしていきたいという思いをあらたにしました。

院長　高橋　聡一郎